人は不安な時、未来を何度も生きてしまう
こんにちは、精神科医しょうです。
先日の診察で、こんな相談をいただきました。
「考えすぎてしまうんです。どうしたらいいですか」
その方は、
特に、まだ起きてもいない未来のことを、
何度も何度も、頭の中でシミュレーションしてしまうと言っていました。
「もしこれが失敗したら」
「もしあの人に嫌われていたら」
「もし来週の予定がうまくいかなかったら」
一つ考え始めると、止まらなくなる。
気づいたら、
何時間も経っている。
夜、
布団に入ってからも、
頭の中だけが動き続けている。
その方は、
少し申し訳なさそうに、
こう言いました。
「こんなこと考えても仕方ないのは、
分かってるんです。
でも、止められなくて」
私は、
その言葉を聞きながら、
臨床でよく出会う光景を思い出していました。
考えすぎてしまう人は、
決して、
弱い人ではありません。
むしろ、
逆のことが多い。
責任感が強い。
先を読む力がある。
人の気持ちに敏感。
失敗を繰り返したくないという、
真剣さがある。
そういう人ほど、
未来を先回りして、
考えてしまう。
これは、
本来、
悪いことではないんです。
未来を予測する力は、
人が危険を避け、
準備をするために、
とても大切な機能です。
問題は、
その機能が、
“働きすぎてしまう”時に起きます。
不安を感じると、
脳は、
「もっと考えれば、
もっと備えられるはずだ」
と判断します。
だから、
考えることをやめられない。
まるで、
考え続けることが、
安全を守る唯一の手段であるかのように。
でも、
実際には、
考えれば考えるほど、
不安が消えるわけではありません。
むしろ逆で、
考えるほど、
不安な未来のイメージだけが、
鮮明になっていく。
“最悪の場合”を、
何度もリハーサルしているようなものです。
体は、
それを何度も、
本当に体験しているかのように、
受け取ってしまう。
だから、
考えているだけなのに、
心も体も、
本当に疲れてしまう。
診察の中で、
私がよく感じるのは、
「考えるのをやめましょう」
と言うのは、
実はあまり意味がないということです。
考えすぎる人に、
「考えるな」と言うのは、
不安な人に、
「不安になるな」と言うのと、
似ています。
本人が一番、
それをやめたいと思っている。
でも、
やめられない。
だから、
必要なのは、
“考えるのをやめること”ではなく、
“考えている自分に、
気づくこと”
なのだと思います。
「今、また、
未来のことを考えている」
そう気づけた瞬間、
実は、
もう一歩、
距離が生まれています。
考えに飲み込まれている状態から、
考えを、
少し外から眺めている状態へ。
その方には、
こんな話をしました。
未来のことを考えるのをやめる必要はない。
ただ、
「今、この考えは、
まだ起きていないことだ」
と、
一言、
心の中で添えてみてください、と。
それだけで、
シミュレーションの強さが、
少し和らぐことがあります。
そしてもう一つ。
考えすぎてしまう時、
人は、
“今”から離れてしまっています。
未来の心配に、
心を持っていかれている。
だから、
あえて、
今この瞬間の感覚に、
意識を戻す練習も、
お伝えしました。
手のひらの感触。
呼吸の音。
窓の外の光。
小さなことでいい。
“今、ここ”に、
少しだけ、
錨をおろすように。
考えすぎてしまう人は、
きっと、
これまでも、
そうやって、
先回りして備えることで、
自分や周りを守ってきたのだと思います。
だから、
その力を、
否定する必要はありません。
ただ、
その力に、
支配されすぎない付き合い方を、
少しずつ見つけていけたらいい。
「考えすぎてしまう自分」を、
責めなくていい。
それは、
真剣に生きてきた証でもあるから。
もし今、
未来のことを考えすぎて、
苦しくなっている人がいたら。
その考えは、
あなたを守ろうとして、
一生懸命、
働いているのかもしれません。
そのことに、
少しだけ、
気づいてあげてください。
それだけで、
心は、
ほんの少し、
軽くなることがあります。




初めまして。大変真面目な我が夫に読ませてあげたい!
そしてその隣にいる私にも、これから主人を理解するのにとても参考になりました✨
ありがとうございました✨
「先回りしてシミュレーションしてしまうのは、それだけ責任感や準備しようとする力が強い証拠」という精神科医の視点にすごく納得しました。自分を責めるのではなく、危険を避けようとする脳の防衛反応だと捉え直すことで、心がすっと楽になりますね。